退去時に、管理会社や貸主から予想以上の費用を請求され、
「退去費用が高すぎる」「敷金が返ってこない」
と困った経験はありませんか?
SNSでは「退去費用〇〇万円」「原状回復費用が高額だった」「入居時の写真を撮っておけばよかった」といった投稿がたびたび話題になります。
しかし、退去時に提示された金額を、内容を確認せずそのまま支払わなければならないとは限りません。
この記事では、不動産会社の株式会社ビッグハートが、
退去費用で損をしないために知っておきたい原状回復の基本と、高額請求を防ぐ7つのポイント
を分かりやすく解説します。
退去費用とは?
退去費用とは、賃貸住宅を退去するときに発生する、室内の修繕費、清掃費、未払い賃料などの総称です。
主に問題になりやすいのが、室内をどこまで修復する必要があるのかという
「原状回復」の範囲です。
原状回復とは、借りた部屋を入居当初の新品同様の状態に戻すことではありません。
通常の生活によって生じた劣化や、時間の経過による自然な損耗まで、すべて借主が負担するという意味ではありません。
一般的には、通常の使用による損耗や経年変化は貸主側の負担、借主の故意・過失や通常とはいえない使用による損傷は借主側の負担として整理されます。
実際の負担区分は、損傷の原因、使用期間、契約書や特約の内容、室内の状態などによって異なります。個別の事情を確認せず、一律に判断することはできません。
借主負担と貸主負担の違い
借主負担になりやすい例
- タバコのヤニや臭いによる壁紙の汚損
- ペットが付けた壁や床の傷、臭い
- 家具などをぶつけてできた壁の穴
- 物を落として生じたフローリングの深い傷
- 水漏れを放置したことで拡大したカビや腐食
- 掃除を怠ったことで生じた著しい油汚れや水垢
- 結露を放置したことによるカビや壁の損傷
- 鍵の紛失や不適切な使用による設備の破損
貸主負担になりやすい例
- 日照による壁紙や床の自然な変色
- 家具を通常どおり置いたことで生じた床の跡
- 冷蔵庫やテレビの後ろに生じた電気焼け
- 設備や建具の経年劣化
- 通常使用による畳やフローリングの摩耗
- 建物構造上の問題によって生じた結露やカビ
- 次の入居者を迎えるための設備交換やリフォーム
※上記は一般的な考え方です。実際の負担区分は、損傷状況や契約内容によって変わります。
退去費用で損をしないための7つのポイント
入居時に室内の写真と動画を撮る
退去費用のトラブルを防ぐうえで、最も重要なのが入居時の記録です。
鍵を受け取ったら、荷物を搬入する前に、壁、床、天井、建具、水回り、設備などを撮影しておきましょう。
- 壁紙の汚れ、傷、剥がれ
- フローリングや畳の傷、変色
- ドア、収納扉、建具の破損
- キッチン、浴室、洗面所、トイレの汚れ
- エアコン、給湯器、換気扇などの設備状態
- ベランダ、窓、網戸の状態
部屋全体を撮影した写真だけでなく、傷や汚れを近距離から撮影した写真も残しておくと安心です。
撮影日が確認できるよう、画像の元データを保管し、必要に応じてクラウドなどにも保存しておきましょう。
入居時チェックリストを必ず提出する
管理会社から室内確認表や入居時チェックリストを渡された場合は、期限内に記入して提出しましょう。
既存の傷や汚れを書かずに返却すると、退去時に入居後の損傷と判断される可能性があります。
チェックリストを提出するときは、提出前の書類を写真やPDFで保存しておくことをおすすめします。
賃貸借契約書と特約を確認する
退去時の負担内容は、賃貸借契約書や特約に記載されています。
特に、次の項目を確認しましょう。
- 退去時のハウスクリーニング費用
- エアコン内部洗浄費用
- 鍵交換費用
- 畳の表替えや障子・ふすまの張り替え
- 喫煙に関する特約
- ペット飼育に関する特約
- 短期解約違約金
- 解約予告期間
「敷金ゼロ」の物件であっても、退去費用が発生しないという意味ではありません。
敷金を預けていない場合、借主負担分が退去後に別途請求されることがあります。
日頃から掃除と換気を行う
通常使用による汚れであっても、長期間放置したことで損害が拡大すると、借主負担と判断される可能性があります。
特に注意したい場所は次のとおりです。
- 浴室、洗面所、窓まわりのカビ
- キッチンや換気扇の油汚れ
- トイレの水垢や尿石
- 排水口の詰まりや悪臭
- エアコンフィルターのほこり
- 結露による壁紙や窓枠のカビ
日頃の簡単な掃除と換気が、退去時の負担を抑えることにつながります。
退去立会いに参加し、その場で確認する
退去立会いが行われる場合は、できる限り参加しましょう。
管理会社や貸主側の担当者が指摘した箇所について、次の点を確認します。
- どの箇所が修繕対象なのか
- 損傷の原因をどのように判断したのか
- 貸主負担と借主負担をどう区分するのか
- 修繕範囲は部分補修か全面交換か
- 後日、見積書や精算書を受け取れるか
立会い確認書に署名する場合は、記載内容をよく確認してください。費用負担や損傷原因について納得できない部分がある場合は、その場で説明を求めましょう。
請求書・見積書の内訳を確認する
退去費用の請求を受けたら、合計額だけでなく、具体的な内訳を確認しましょう。
「原状回復工事一式」「室内補修一式」など、内容が分からない記載だけの場合は、詳細な説明を求めることが大切です。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 修繕箇所 | どの部屋の、どの部分を修繕するのか |
| 数量・面積 | 壁紙や床材を何平方メートル交換するのか |
| 単価 | 材料費や施工費の単価はいくらか |
| 負担割合 | 貸主と借主でどのように負担を分けたのか |
| 使用年数 | 入居期間や設備・内装材の経過年数が考慮されているか |
| 特約 | 請求の根拠となる契約条項があるか |
壁紙の一部分だけに傷があるにもかかわらず、部屋全体の張り替え費用を請求されている場合などは、全面交換が必要な理由を確認しましょう。
退去直前にも写真と動画を残す
荷物をすべて搬出し、掃除が完了したら、室内全体を撮影しましょう。
次の場所は忘れずに記録してください。
- 各部屋の壁、床、天井
- キッチン、浴室、洗面所、トイレ
- 収納内部
- 窓、網戸、ベランダ
- エアコンや給湯器などの設備
- 玄関、靴箱、鍵
退去後は室内へ入れなくなるため、鍵を返却する前に撮影を済ませることが重要です。
SNSでよく見る「退去費用が高すぎる」と感じたら
退去費用に納得できない場合は、感情的に拒否するのではなく、まず契約書、写真、請求書を整理しましょう。
次の順序で確認すると、状況を整理しやすくなります。
- 賃貸借契約書と特約を確認する
- 入居時・退去時の写真を比較する
- 請求書や見積書の内訳を確認する
- 各費用の根拠と負担区分について説明を求める
- 回答内容をメールや書面で残す
- 解決しない場合は専門窓口へ相談する
このように、争う姿勢を示すのではなく、請求の根拠を具体的に確認することが大切です。
退去費用で特に注意したいケース
敷金ゼロ物件
敷金ゼロ物件は、入居時の費用を抑えやすい一方、退去時の借主負担分が後から請求されることがあります。
契約前に、退去時の清掃費や定額負担金の有無を確認しましょう。
ペット可物件
ペット可物件では、通常の賃貸住宅よりも敷金が上乗せされたり、退去時の消臭・消毒・補修費用に関する特約が設けられたりすることがあります。
壁や床の傷だけでなく、臭いも問題になりやすいため、日頃の清掃や換気が重要です。
喫煙していた場合
室内での喫煙によるヤニ汚れや臭いは、通常使用の範囲を超える損耗と判断され、壁紙の張り替えや消臭費用を請求される可能性があります。
電子タバコや加熱式タバコについても、契約内容や室内の状態によって判断されるため注意が必要です。
短期間で退去する場合
契約開始から1年未満など、短期間で解約する場合は、短期解約違約金が設定されていることがあります。
原状回復費用とは別に、家賃1か月分または2か月分などの違約金が発生する場合があるため、解約前に契約書を確認しましょう。
退去予告が遅れた場合
賃貸住宅では、退去日の1か月前または2か月前までに解約を申し出るよう定められていることがあります。
連絡が遅れると、実際に住んでいない期間の家賃まで支払うことになる場合があります。
よくある質問
敷金は必ず返ってきますか?
必ず全額返還されるわけではありません。未払い家賃、借主負担となる修繕費、契約上の清掃費などがある場合は、敷金から差し引かれることがあります。精算書を確認し、何にいくら使われたのかを確認しましょう。
ハウスクリーニング代は必ず支払う必要がありますか?
契約書に退去時のクリーニング費用を借主が負担する旨の特約がある場合は、その内容に基づいて請求されることがあります。契約書の記載内容、金額、説明の有無などを確認することが重要です。
壁紙に小さな傷があると、全面張り替えになりますか?
傷の位置や大きさ、壁紙の状態、補修方法などによって異なります。小さな傷であっても、色や柄の違いから部分補修が難しいことはありますが、全面張り替え費用をすべて借主が負担するとは限りません。修繕範囲と負担割合の根拠を確認しましょう。
画びょうやピンの穴は借主負担ですか?
通常の掲示に使う程度の画びょうやピンの穴は、一般的には通常使用の範囲と考えられることがあります。一方、下地ボードまで損傷する大きな釘穴やネジ穴は、借主負担となる可能性があります。
家具を置いていた床のへこみは借主負担ですか?
家具を通常どおり設置して生じたへこみや跡は、通常使用による損耗として扱われることがあります。ただし、引きずったことで生じた深い傷や、不適切な使用による破損は借主負担となる可能性があります。
高額な退去費用を請求されたら、どうすればよいですか?
まず、契約書、特約、入居時・退去時の写真、請求書の内訳を確認してください。不明な費用については、管理会社や貸主へ根拠の説明を求めます。話し合いで解決しない場合は、消費生活センターなどの相談窓口を利用する方法があります。
退去立会いをしないと不利になりますか?
立会いができないからといって、直ちに借主が不利になるとは限りません。ただし、室内状態を双方で確認する機会がなくなるため、退去直前の写真や動画を詳しく残しておくことがより重要になります。
退去日までに行うチェックリスト
- 管理会社または貸主へ解約通知を提出した
- 解約予告期間と最終家賃を確認した
- 電気、ガス、水道、インターネットの停止手続きをした
- 郵便物の転送手続きをした
- 粗大ごみや不用品を処分した
- 室内、収納、ベランダを清掃した
- 自分で設置した設備や家具を撤去した
- 入居時と退去時の写真を整理した
- 鍵や備品の返却方法を確認した
- 退去立会いの日時を確認した
- 敷金精算書や退去費用の送付先を伝えた
ビッグハートからのアドバイス
退去費用のトラブルは、入居するときから対策を始めることが重要です。
契約書を読み、入居時の状態を写真で記録し、日頃から適切に掃除や換気を行うことで、多くのトラブルを予防できます。
退去時に費用を請求された場合も、金額だけを見て慌てるのではなく、
「どこを、なぜ、どの範囲まで直すのか」
を確認しましょう。
株式会社ビッグハートでは、お部屋探しだけでなく、契約内容や入居時の注意点についても、できる限り分かりやすくご説明しています。
これから賃貸住宅を探す方、契約内容に不安がある方は、お気軽にご相談ください。
まとめ|退去費用で損をしないために
- 原状回復は、部屋を新品同様に戻すことではありません。
- 通常使用による損耗や経年変化は、一般的に貸主負担として整理されます。
- 故意・過失や手入れ不足による損傷は、借主負担となる可能性があります。
- 入居時と退去時の写真・動画が重要な記録になります。
- 賃貸借契約書と特約を事前に確認しましょう。
- 請求書は合計額だけでなく、修繕範囲、数量、単価、負担割合を確認しましょう。
- 納得できない費用は、根拠について説明を求めましょう。
※本記事は、賃貸住宅の退去費用や原状回復に関する一般的な情報を提供するものです。実際の費用負担は、賃貸借契約の内容、特約、損傷原因、入居期間、室内状況などによって異なります。個別のトラブルについては、契約当事者、管理会社、専門家または公的相談窓口へご確認ください。

コメント